抄録
〔目的〕本研究は,膝OAの歩き始めに生じる膝関節のメカニカルストレスを解明することを目的とし,歩き始めを捉えるうえで,外部膝関節内反モーメントが重要な指標であることを明らかにすることである。〔対象〕対象者は変形性膝関節症の女性10名と健常中年者の女性9名であった。〔方法〕課題動作は歩き始めと定常歩行とし,各動作は3次元動作解析装置と床反力計を用いて立脚肢の外部膝関節内反モーメントを算出した。そして,変形性膝関節症者と健常者における歩き始めと定常歩行時の立脚肢の外部膝関節内反モーメントの差を比較することとした。〔結果〕外部膝関節内反モーメントは二元配置分散分析の結果,群の主効果のみに有意差が認められ,課題動作の主効果には有意差は認められなかった。〔結語〕膝OAは健常者より外部膝関節内反モーメントが増大しており,歩き始めと定常歩行とでは同程度の外部膝関節内反モーメントの大きさであった。膝OAの歩き始めを捉えるうえで,外部膝関節内反モーメントは膝関節のメカニカルストレスを反映する重要な指標であると考えられる。