2011 年 26 巻 6 号 p. 777-780
〔目的〕本研究では,施設入居中の高齢者に対しEMST(Expiratory muscles strength training)プログラムが随意的咳嗽力に及ぼす効果について明らかにすることを目的とした.〔対象〕対象者はケアハウスに入居している高齢者21名とし,EMSTプログラムを行ったEMST群10名(年齢80.6±8.6歳)と対照群11名(年齢76.7±9.3歳)に分けた.〔方法〕EMSTのプロトコールは,呼気筋訓練器(Threshold® PEP)を用い, 最大呼気圧の50%の圧力に設定し, 15回2セットを1日に2回,5週間実施した.測定項目は最大呼気圧,最大吸気圧,努力性肺活量,一秒量,最大呼気流速,最大咳嗽流速とした.〔結果〕5週間後に,対照群は全ての測定項目で有意な変化は認められなかったが,EMST群は最大呼気圧,最大呼気流速,最大咳嗽流速に有意な増加が認められた.〔結語〕本研究により施設入所の高齢者に対するEMSTは,呼気筋力が大きく関与している随意的咳嗽力を高めるための効果的なプログラムであることが示唆された.