理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
原著
椅子からの立ち上がりにおける若年者と高齢者の体幹と下肢の動きの関係
野澤 涼山本 澄子
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2012 年 27 巻 1 号 p. 31-35

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抄録

〔目的〕椅子からの立ち上がりは臀部から足部のみの狭い支持基底面へ重心移動させる,そして重心を立位まで上昇させるという力学的要求が大きい動作であり,重心の移動には体幹の動きが重要となってくる.そこで今回は,若年者と高齢者を対象とし,胸部と骨盤に分けた体幹部位の前傾運動と下肢関節運動が椅子からの立ち上がり動作にどのように影響を及ぼすかを明らかにすることを目的として研究を行った.〔方法〕三次元動作解析装置と床反力計を使用し,胸部最大屈曲角度,骨盤の最大前傾角度,身体重心の最大移動速度,臀部離床時の胸部と骨盤の絶対角度,骨盤に対する胸部の相対角度,股関節,膝関節の最大伸展モーメントを算出し,若年者と高齢者の違いを知るために,これらの項目間の相関を求めた.〔結果〕若年者では胸部の最大屈曲角度,骨盤に対する胸部の相対角度の最大屈曲角度と膝関節最大伸展モーメントに有意な負の相関が見られ,高齢者では胸部の最大屈曲角度,骨盤の最大前傾角度と膝関節最大伸展モーメントにそれぞれ有意な負の相関が見られた.また立ち上がりに要した時間に違いが無いにもかかわらず,身体重心の進行方向の最大移動速度は若年者と比較し高齢者のほうが速かった.〔結語〕高齢者は胸部,骨盤の屈曲,前傾を利用し,身体重心の進行方向の移動速度を高めることにより,身体重心の上昇を可能にしており,若年者は胸部の前傾を利用し身体重心の上昇を可能としていることが示唆される.

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© 2012 by the Society of Physical Therapy Science
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