理学療法のための運動生理
Print ISSN : 0912-7100
慢性肺疾患に対する集中的呼吸理学療法の効果
―換気障害のパターンと呼吸困難感の程度による相違―
神津 玲北川 知佳田中 貴子石川 秀文前本 英樹千住 秀明
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1994 年 9 巻 4 号 p. 203-210

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抄録

本研究の目的は,現在一定した見解が明らかにされていない慢性肺疾患患者に対する呼吸理学療法の効果を明確にし,整理することである。慢性肺疾患患者58例を対象に,集中的な呼吸理学療法を理学療法士がマンツーマンで,1回30~60分,1日1回,週6日の頻度でゴールに達するまで施行し,その前後で呼吸困難感(Hugh-Jonesの分類),肺機能,血液ガス,呼吸筋力・耐久力,6分間歩行距離(6MD),ADLを評価,比較検討した。その結果,肺機能と血液ガスの一部(FEV1.0,FEV1.0%,PaCO2)を除く全ての評価項目で有意な改善を認めた。さらに,換気障害のパターン別に効果の相違を比較した結果,PaO2,AaDO2が閉塞群のみに,%MVV,PaCO2が拘束群のみにおいて改善した。Hugh-Jonesの程度別での呼吸困難感の改善は,V度の症例で有意な改善率の低下を示した。今回の成績から,慢性肺疾患患者に対し,綿密な治療内容,高頻度,長期間の呼吸理学療法を施行することで,呼吸困難感,耐運動能,ADLの改善に加えて,肺機能や血液ガスも改善すると結論した。さらに換気障害のパターンにより,その効果の発現機序や特性に相違があることが示唆された。

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