1996 年 11 巻 3 号 p. 145-151
人類学には,ヒトを文化面から研究する文化人類学と,ヒトを対象とした生物学である自然人類学がある。ここでは,後者に関して主に形態学の立場から行われている計測法について概説する。計測対象は,化石人類を含めたヒトの骨あるいは現世人類の生体である。世界的に統一された計測点に関して,これら2点間の距離や3点の成す角,そして周径等が測定される。近年では,形態の分析にフーリエ解析等の手法も導入されてきている。測定データは多変量解析によって分析され,形態の特徴,類似点等が明らかにされる。しかし,形態と機能との関連については,まだ未知の部分が多く,形態の特徴を機能と結びつけて分析した研究は少ない。