陸水学雑誌
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人工水路において添加された微細粒子の堆積が付着藻類の群落構造に与える影響
中井 大介大塚 泰介中原 紘之中野 伸一
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2009 年 69 巻 3 号 p. 209-221

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抄録

 付着藻類群落の発達過程に及ぼす微細懸濁物質堆積の影響を,人工水路を用いた実験により調べた。化学的に安定な微細炭化珪素粒子を添加した人工水路および添加していない人工水路において発達した付着藻類群落の,クロロフィルa 量,種組成および立体構造を比較した。水路に設置した基板を1,3,9-12,20-23日後に回収して観察し,計6回の繰り返し実験を行った。微細懸濁物質の有無は付着藻類群落の種組成とクロロフィルa量に大きな違いをもたらさなかった。一方,群落の発達過程および立体構造には違いが見られた。クロロフィルa量は微細粒子を添加していない水路では9-12日目から20-23日目の間に,減少することが多かったのに対して,微細粒子を添加した水路では引き続き増加した。微細粒子を添加した水路では,微細粒子が藻類細胞と共に堆積し,間隙の少ない密な構造が形成されていた。この構造が,光合成による気泡の発生および水流による付着藻類の剥離を抑えたと考えられる。

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© 2009 日本陸水学会
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