陸水学雑誌
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湧水性端脚類ヒメアナンデールヨコエビ Jesogammarus fluvialis Morinoの地理的分布と生息環境
草野 晴美
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2009 年 69 巻 3 号 p. 223-236

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抄録

 湧水性端脚類の1種,ヒメアナンデールヨコエビJesogammarus fluvialis Morinoの地理的分布と生息場所の環境ついて,1986年から2006年にかけて調査を行なった。東海から中部にかけての広域調査により,本種は鈴鹿山脈周辺と富士山周辺の2つの地域に分かれて分布することがわかった。高密度の生息は湧水源流周辺に限られ,湧水が流入する河川本流では生息しないか,または密度が低かった。また本種が生息していた湧水流には,5つの共通する特徴が見られた。すなわち,(1)水温は10~17℃の範囲内である,(2)底質は砂礫である,(3)平野部または平坦な地形にある,(4)開空度が高い,(5)沈水性または抽水性の水生植物が繁茂する。本種はこのような湧水流でミズムシや水生昆虫などともに,主に水生植物に付着して生息していた。また微小分布の調査からは,密な植物体に密集する傾向があること,スラッジの堆積やエビや魚などの捕食者の存在が生息を抑制する要因となっていることが示唆された。

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© 2009 日本陸水学会
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