陸水学雑誌
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原著
湖沼におけるクロロフルオロカーボン類汚染と水循環
宮原 裕一浅井 和由山本 雅道
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2011 年 72 巻 1 号 p. 41-55

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抄録
 わが国で初めて,湖水中のクロロフルオロカーボン類(CFCs)濃度の測定を,長野県の代表的な湖沼である諏訪湖および木崎湖において行った。諏訪湖では,大気との気-液平衡では説明しきれない高濃度のCFC-113が検出された。これは,過去の産業活動で放出されたCFC-113による土壌や地下水の汚染が原因と考えられた。このため諏訪湖では,気-液平衡を保つため,湖水から大気中へCFC-113を放出していると考えられた。一方,木崎湖では表層と下層のCFCs濃度に差が見られたが,その濃度は,水温成層形成の過程で,湖水が大気と接していたときの水温で説明できた。また,木崎湖では,CFCsと主要イオンの鉛直分布いずれも,湖水の水温成層をよく反映していた。海外での報告と同様,わが国の湖沼においても,CFCsは湖水の混合や循環に関し,化学トレーサーとなり得ることが示された。
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© 2011 日本陸水学会
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