抄録
江津湖には2つの異なる深度にある地下水帯水層から,合わせて日量約40~50万m3もの地下水が湧出しているが,帯水層を区分する湖成層から構成される難透水層が部分的に欠如していることもあり,各々の帯水層からそれぞれどの程度地下水が湧出しているか不明である。筆者らはこれまでの江津湖における研究成果から,この種の水の起源判定に湖水および地下水中の222Rn濃度が有効なトレーサーになり得ることを明らかにした。これを踏まえ2009年6月より1ヵ月に1回の頻度で採水調査を実施し,江津湖周辺に湧出する地下水の帯水層別の寄与率について222Rnの混合モデルを用いて評価を行った。その結果,深層地下水の湖へ対する寄与率が平均で58%と大きく,寄与率は季節的に変動することが判明した。この事実は江津湖内における物質収支をより正確に算定するのに役立つと考えられる。