陸水学雑誌
Online ISSN : 1882-4897
Print ISSN : 0021-5104
ISSN-L : 0021-5104
原著
ワカサギ杯頭条虫(条虫綱変頭目杯頭条虫科)の分布と生活史
菊池 智子大高 明史
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 76 巻 2 号 p. 129-138

詳細
抄録

 ワカサギ杯頭条虫Proteocephalus tetrastomus (条虫綱変頭目杯頭条虫科)の分布と生活史を明らかにするために,日本各地のワカサギで寄生状況を調査するとともに,青森県小川原湖のワカサギで条虫の寄生率と発育ステージの季節変化を調べた。ワカサギ杯頭条虫は,調査した34の湖沼のうち19湖沼のワカサギで確認された。条虫の分布には地理的な偏りは見られず,湖沼の塩分特性や栄養状態との関連性もなかった。条虫の寄生数とワカサギの肥満度との間には,どの湖沼でも有意な負の関係は見られなかった。
 小川原湖のワカサギに見られるワカサギ杯頭条虫は,春から夏に向かって体長が増加するとともに成熟が進行した。感染可能な幼虫を持った成熟個体は夏期を中心にして6月から12月まで見られた。一方,小型の若虫は7月に現れ,その割合は秋から冬に高まった。こうした季節変化から,ワカサギ杯頭条虫の生活史は一年を基本とし,夏から秋に世代交代が起こると推測された。

著者関連情報
© 2015, The Japanese Society of Limnology
前の記事 次の記事
feedback
Top