陸水学雑誌
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短報
渓流釣り場のゾーニング管理に対する釣り方別遊漁者の志向の差異
玉置 泰司桟敷 孝浩久保田 仁志
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2015 年 77 巻 2 号 p. 145-153

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抄録

 日本の渓流における遊漁は,主として,餌釣り,ルアー釣り,フライ釣り,テンカラ釣りの4つに大別される。釣り場における遊漁資源管理の方法に対する遊漁者の志向は釣り方によって異なることが想起されるものの,その差異を明らかにする研究は我が国ではほとんど行われていない。釣り場の管理方策及び遊漁者の集客方策を検討する際には,これらの志向を把握することが重要である。そこで,栃木県鹿沼市の大芦川において,遊漁者へのアンケート調査を実施した。その結果,餌釣りをする人に比べてルアー釣りやフライ釣りをする人は,インターネットや釣り雑誌など,より様々な情報を参考に釣り場を選択していた。禁漁区・輪番禁漁区の設定には,釣り方にかかわらず回答者の約9割が賛同していた。仮想市場評価法(CVM)を用いた支払意志額(WTP)に関するアンケートでは,通常の日釣り券価格よりも餌釣りの人で14.2%,フライ釣りの人で19.4%,ルアー釣りをする人で27.7%高くても輪番禁漁区を解禁した場所での釣りを希望した。また,大芦川で持ち帰り尾数制限を新たに設定することに対しては,フライ釣り,ルアー釣り,餌釣りをする人のそれぞれ75.6%,64.0%,40.3%が賛成した。遊漁資源保護のためには,輪番禁漁区の解禁時に遊漁料の値上げや尾数制限といった遊漁規則を組み合わせることが効果的であると考えられた。

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© 2016, The Japanese Society of Limnology
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