陸水学雑誌
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北海道中央部に湧出する温泉水中のフミン酸の分析と特性
高野 敬志内野 栄治青柳 直樹
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2015 年 77 巻 2 号 p. 167-174

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抄録

 北海道中央部に湧出する温泉水のフミン酸濃度を鉱泉分析法指針による塩酸酸性沈殿-重量測定法により分析した。この分析過程のメンブランフィルター水洗時に,沈殿物がフィルターを通じて溶出したため,フミン酸を検出できなかった。メンブランフィルターを2 %塩酸溶液で洗浄した場合,フィルター上に沈殿が残り,フミン酸濃度を求めることができた。この値は塩酸酸性-沈殿形成前後の有機炭素濃度の差から推定したフミン酸濃度と比較すると,低く見積もられていることが示唆された。そこで,沈殿を洗浄する媒体およびメンブランフィルターの孔径の条件を変えて,フィルターから溶出する有機炭素濃度を調べた。その結果,2 %塩酸溶液でメンブランフィルターを洗浄した場合に孔径0.6 µm以下のメンブランフィルターを使用すること,Milli-Q水でメンブランフィルターを洗浄した場合に0.2 µm以下のメンブランフィルターを使用することで,分析時のフミン酸の損失が少なくなることが明らかとなった。DAX-8樹脂を用いた分析では,フミン酸とフルボ酸双方合わせた濃度は,測定された有機炭素濃度全体の59.7 %占め,これまでの報告例と比較してフルボ酸に対するフミン酸の割合が高かった。更に,温泉水に含有するフミン酸の分子サイズ分布を,限外ろ過により分画して有機炭素濃度を測定することによって推定したところ,比較的大きな分子サイズのフミン酸が優占することが示唆された。これらのことから,本研究における温泉水中のフミン酸の特徴は,地表水と比較して異なることが示唆された。

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© 2016, The Japanese Society of Limnology
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