陸水学雑誌
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琵琶湖北湖第一湖盆における底質環境と表層堆積物による溶存酸素消費
後藤 直成福田 紀小村 沙織吉村 葵伴 修平
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2017 年 78 巻 2 号 p. 169-178

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抄録

 琵琶湖北湖第一湖盆北西部の深湖底域(水深80 m以深)における大規模低酸素水塊の形成機構の一端を明らかにするため,第一湖盆における底質と湖底堆積物による溶存酸素消費速度(SOD)を測定した。第一湖盆の計5地点(水深40~95 m)において季節毎に湖底堆積物の柱状試料を採取し,SODを測定した。また,底質については,第一湖盆の計65地点で湖底表層堆積物を採取し,有機物(炭素,窒素,リン)の分布と起源(自生成,他生成)を評価した。その結果,第一湖盆の水深40 m以深の湖底域における有機物含有量(g m-2)は,一部の湖底域を除いて,ほぼ一様に分布しており,また,その中でも水深80 mを越える深湖底域は有機物含有率(%)が高く,自生成有機物に富んだ堆積物で構成されていることが明らかとなった。SODは,季節的に変動(192~271 mgO2 m-2 d-1)したが,各測定月における地点間のSODには有意な差は認められなかった。つまり,第一湖盆の湖底40 m以深におけるSODは,有機物の沈降・供給量に応じて季節的変動を示すものの,40 m以深における湖底近傍の水温と有機物含有量がほぼ一様であったため,空間的にはほぼ同じ値になったと考えられる。これらの結果から,深湖底域における大規模低酸素水塊の形成には,湖底近傍の水柱における酸素動態が大きく作用していると推測される。

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© 2017, The Japanese Society of Limnology
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