霞ヶ浦は,西浦・北浦・外浪逆浦の3水域が河川で連結した形の湖沼であり,広くて浅い特徴を持つ。生態系構造や水質の理解のためには植物プランクトン群集の量や組成の把握が大切だが,近年の霞ヶ浦全域における植物プランクトン群集を体積の視点から明らかにした報告はない。そこで,霞ヶ浦全域における2005年以降の植物プランクトン群集の変遷を明らかにした。
霞ヶ浦全域において,2005年から2007年は珪藻綱が,2008年から2010年ごろまでは藍色細菌綱ユレモ目のPlanktothrixが,2011年以降は再び珪藻綱が優占する傾向であった。また,西浦では,珪藻綱中心目のCyclotellaやAulacoseiraの優占率が高く,また,Planktothrixが2008年から2010年に著しく優占していたのに対し,北浦では珪藻綱羽状目のSynedraが多く,Planktothrixの優占化が西浦よりも弱く長期化している傾向がみられた。霞ヶ浦全域における植物プランクトンの総細胞体積は,西浦・北浦・外浪逆浦すべてで減少傾向であり,その理由としてPlanktothrix,Cyclotella,Cryptomonasの細胞体積の減少が挙げられた。多様度指数は2007年に全地点において急激に低下し, Planktothrix一属優占型の植物プランクトン群集が全域で形成されていたと示唆された。多様度指数は,西浦と外浪逆浦では2011年に急激に回復したが,北浦では回復は緩やかであった。