陸水学雑誌
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酸性化された田澤湖の夏季の生物相
佐藤 隆平
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1952 年 15 巻 3-4 号 p. 96-104

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抄録

1) 酸性の玉川の水を導入してから8年7ケ月を経過した昭和23年夏期に於ける田沢湖の湖沼條件及び生物相を調査した.
2) 田沢湖に導入された玉川の酸性の水は15~25℃であるので, 所謂楔状の成層をなして等温の10~20m層を拡散し乍ら流出口に達するが, 長期間に深層迄影響を及ぼしその実測値は現在pH4.3~5.3を示してゐる.
3) 動物性浮游生物としてはScapholeberis mucronata, Chydorus sphaericus及びCyclops strenuus, 植物性浮游生物としてはOscillatoria sp.が見出された.之等の中でScapholeberis mucronataが爆発的に大量に発生し表層に於て1m3当り4636個かぞへられた.
4) 底棲生物としてはエスリカ幼虫がウグイの胃中より見出されたので, 之から本種の棲息してゐることが推察される.
5) 魚類としてはアメマス, ウグイ及びギギの棲息してゐることが確められたが, 從來田沢湖に饒産してゐたクニマスは著しく減少したか或は絶滅に近い状態にあるものと推察される.

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