陸水学雑誌
Online ISSN : 1882-4897
Print ISSN : 0021-5104
ISSN-L : 0021-5104
黒淵ダム建設前および建設後の丹生川の水生昆虫群集
御勢 久右衛門
著者情報
ジャーナル フリー

1965 年 25 巻 3-4 号 p. 113-122_1

詳細
抄録
1.吉野川水系(奈良県)の丹生川において,黒渕ダム湖築造前と完成後の水生昆虫群集について1954年4月3日と1960年4月2日に調査を行なつた.
2.黒渕ダム湖築造前の丹生川の水生昆虫群集は,種数,個体数,現存量ともに多く(Hydropsyche ulmeriParastenopsyche sauteriが優占種),造網型係数が64~94%に達し,瀬における水生昆虫群集の極相にあると考えられる.ダム完成後(ながれダム湖)の水生昆虫群集は,ダム湖の影響のない城戸では,種数,個体数,現存量とも変りはない.ダム湖と化した黒渕では種数,個体数,現存量ともに少なく,そのうちでも底質が湖首部の石礫,湖中部の泥かぶりの礫砂,湖尾部の泥となるにつれて,底生動物の優占種はEcdyonurus yoshidaePotamanthus kamonisLimnodrilus sp.の移りゆきを示す,またその優占生活形は匍匐型→掘潜型となる.黒渕堰堤のすぐ下流では,種数,個体数,'現存量とも少なく,優占生活形は匍匐型となる.和田の優占生活形は遊泳―匍匐型.さらに下流の生子は種数,個体数,現存量が増加し,優占生活形は造網型となる.
著者関連情報
© 日本陸水学会
前の記事
feedback
Top