陸水学雑誌
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茨城県中沼の湖水と梅雨期の降水中の農薬残留濃度
野原 精一花里 孝幸岩熊 敏夫
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1997 年 58 巻 4 号 p. 385-393

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抄録

湖への農薬の負荷量を把握するために,1990年の梅雨期の雨水中の農薬濃度を茨城県で測定した。降水中の最大農薬残留量はオキサジアゾンで4.2μgl-1であった。雨水中のフェノベンカーブ(BPMC),フェニトロチオン(MEP),エジフェンフォス(EDDP)の濃度は0.58,0.53,0.36μgl-1以下であった。フェニトロチオンの雨水からの年間降下量の割合は出荷量の1.5%と見積もられた。雨水による各農薬降下量は雨量や茨城県の農薬出荷量との有為な関係は見られなかった。1990年3月から12月に茨城県中沼の湖水及び一時的に流入する農業用水の中の農薬濃度を測定した。モリネート,シメトリン,イプロベンフォス(IBP),チオベンカーブの農業用水の中濃度は1.2μgl-1以上と高い範囲にあった。ダイアジノン,マラソン,フェンチオン(MPP)の農業用水の中濃度は02μgr1以下と低い範囲にあった。湖水中のシメトリンの最大濃度は0.91μgl-1であった。クロルニトルフェン(CNP)を除いて,湖水中の最大の濃度は農業用水の約1/10程度であった。湖沼への農薬流入を見積もる上で雨水を介しての流入は重要な流入源の一つである事が明らかになった。

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