5つの湖沼の22定点において水中の太陽紫外線の消散過程とその要因を調べた。
測定を行った全ての水域において,太陽放射は水深とともにほぼ対数的に減衰し,UVB(280-315nm),UVA(320-400nm),光合成有効波長(400-700nm)の順で強く減衰された。太陽放射の減衰の程度は水域により大幅に異なり,UVBの水面での放射量に対して1%となる水深(Z1%)は,富栄養水域で0.3から1m,貧から中栄養で2m以上であった。また,UVBとUVAのZ1%はそれぞれ透明度の0.5倍,0.9倍であった。UVBとUVAの消散係数(m -1)は,湖水中のクロロフィルおよび懸濁態有機炭素濃度と強い正の相関を示し,溶存有機炭素濃度と弱い相関を示した。これ迄の報告では,水中紫外線の消散要因として溶存有機物による吸収が強調されていたが,植物プランクトン量が多くDOC濃度が低い水域では,植物プランクトンが水中紫外線の主な消散要因となることが推測された。