陸水学雑誌
Online ISSN : 1882-4897
Print ISSN : 0021-5104
ISSN-L : 0021-5104
砂モデル実験による海岸地下水の非定常挙動
井内 国光柿沼 忠男
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 62 巻 1 号 p. 41-50

詳細
抄録

本研究は砂を詰めた実験水槽を用いて,上流部の淡水水頭を急変させた場合と海岸部で潮汐変動を与えた場合の両者について実験を行い,被圧帯水層内の目視境界面や濃度分布の非定常挙動について考察を行ったものである。まず,淡水位の急激な変化に伴う非定常挙動を調べた結果,塩水の侵入にかかる時間は後退にかかる時間よりも長く,また,侵入時には,帯水層底面付近の濃度分布は,c/cs=0.5(ここに,c,csは地下水及び海水の塩の濃度)より高濃度領域では水平方向の濃度勾配が小さく,逆にc/cs=0.5より低濃度領域では濃度勾配が大きいことがわかった。しかし,後退時にはこうした非対称性はほとんどみられない。次に,潮汐影響下での非定常挙動を調べた結果,種々の周期や振幅の潮汐に対して,海水位変動に比べて塩水楔の長さと高さには位相の遅れがみられ,長さのほうがより遅れが大きかった。また,塩水が最も侵入するのは海水位が下げ潮時の平均海面に達する時刻であり,この時刻に濃度の遷移領域が最も広がった分布となった。以上の知見は,数値解析による結果に一致するものである。

著者関連情報
© 日本陸水学会
前の記事 次の記事
feedback
Top