1993年から2003年の期間の酸性雨陸水影響モニタリング調査において,沢ノ池(京都市)のpH,アルカリ度の平均値はそれぞれ5.53,16μeqL-1であり,環境省による国内の湖沼についての調査結果の中では最も低いレベルに属していた。モニタリングの期間にpH,アルカリ度,各種イオン類の濃度は,特別の経年的な増加または減少の傾向を示さなかった。しかし池水のH+イオン濃度は池の水位と負の相関を示しながら変動する傾向(Y=-0.652)があり,SO42-イオン濃度とは正の相関(γ=0.632)を示した。一方H+イオン濃度と水温や,クロロフィルa濃度との相関性(γ=-0.143および0.006)は低く,池水のpH変動は水温や光合成活性の変化を反映した結果ではないと考えられる。モニタリング期間には2000年の三宅島噴火の影響をうかがわせるpH低下例もみられた。池水下層部では弱い躍層が形成される夏季にDOが低下し(最低値:1.9mgL-1),アルカリ度とRpHの上昇(最高値:52μeqL-1,65)がみられた。