30 巻 (1969) 1 号 p. 39-54
高令者の手術に際しては,手術前後の病態生理,なかでも腎の体液水分調節機構を十分認識しておくことが必要である。そこで腎髄質機能の一つである滲透圧クリアランスを中心に高令者と若年者との対比並びに輸液量の差による影響について臨床例50例を対象として検討した。
高令者では術前よりすでに腎濃縮稀釈機能が低下していることは最高尿滲透圧濃度,滲透圧クリアランス,遠位側水再吸収量,自由水クリアランスの低下などから伺うことが出来る。また滲透圧クリアランス,遠位側水再吸収量とP S P排泄試験(15分値)とは共に低下し相関が認められた。術後滲透圧クリアランスの変動では若年者では術後1~3日目に最高尿滲透圧濃度,遠位側水再吸収量が増加するが高令者ではあまり増加せず,また高令者ではNa/K値および尿申Na排泄量の面からNa蓄積の傾向がみられる。また輸液量を20~40ml/kg/日として術後一次水分平衡をみると,高令者では輸液量40ml/kg/日以上ではやや水分蓄積の傾向がみられる。したがつて高令者では術後腎濃縮稀釈機能が低下することを考慮して術後1~3日目の輸液量は25~35ml/kg/日が適当と考える。