日本臨床外科医学会雑誌
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出血ショックに対する高圧酸素療法の臨床的応用とその治療効果に関する実験的研究
埴原 忠良
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1974 年 35 巻 2 号 p. 115-128

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抄録
著者はパナコン2000型を改良したChamberを用いて,出血ショックに対する高圧酸素療法の臨床的応用とその治療効果について実験的研究を行ない,つぎの成績を得た.
1. 致死的大出血を来たして高度のショック状態に陥り,大量の輸液,輸血など種々な抗ショック療法を行なつたにもかかわらず,全身状態依然として極めて険悪で手術はおろか麻酔にさえ到底耐え得ないと思われるようなはなはだ重篤な臨床例11例の患者に,高圧酸素療法を術前あるいは術後1~2回併せ行なつて積極的に外科的治療を敢行し, 77才という高令者の出血性胃潰瘍1例,胃肉腫術後出血1例を除いた9例のことごとくを救助することが出来た.
なお,このさい輸液あるいは輸血を行ないながら高圧酸素療法を行なうと,いずれの症例も血圧,脈拍数,心電図,呼吸数などの循環呼吸動態は劇的に改善されるとともに,代謝性アチドーヂスもよく改善される事実が確認された.
2. 1) ウサギの致死的出血ショックに対して,高圧酸素療法単独では死亡率の減少とその生存時間の延長は認められなかつたが,輸液あるいは輸血と同時に高圧酸素療法を併せ行なうと,その死亡率の減少と生存時間の著しい延長が確認されるとともに,動脈血圧,脈頚動血流量,中心静脈圧,動脈血中酸素分圧の著しい低下ないしは減少と高度の代謝性アチドーヂスが極めてよく改善される事実が確認された.
2) ウサギの致死的出血ショック時の腸間膜微小循環における広範囲のSludge phenomenaは高圧酸素下では極めてよく阻止抑制されるとともに,輸液あるいは輸血により微小循環動態がよく正常に復する事実が顕微鏡直視下で観察された.
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