日本臨床外科医学会雑誌
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術前に局在診断しえた原発性アルドステロン症の2治験例
冬広 雄一樽谷 英二沈 敬浦橋本 仁坂崎 庄平紙野 健人梅山 馨別府 敬三堀 千恵
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1982 年 43 巻 10 号 p. 1151-1157

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抄録

原発性アルドステロン症は1955年Connにより初めて記載されて以来,広く認められるようになった疾患であるが,著者らは腺腫による原発性アルドステロン症の2例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.
症例1: 49歳,女性,術前血圧210-100mmHg,血清K 2.6mEq/L,血中アルドステロン値1,600ρg/ml以上で,副腎シンチグラムで右副腎に著明なRIの集積,動脈撮影にて右副腎にtumor stainを認めたが,副腎静脈血samplingによるアルドステロン値は,両側とも1,600ρg/ml以上とscale overを示し,これによる局在診断は不能であった.摘出した右副腎腫瘍は,大きさ,3.5×3.0×2.0cm,重量, 10.5gの腺腫であった.
症例2: 43歳,女性,術前血圧210-100mmHg血清K 3.3mEq/L,血中アルドステロン値124.0ρ9/mlで,副腎シンチグラムで左副腎にRIの集積,動脈撮影にて左副腎にtumor stkinを認め,副腎静脈血samplingでは,左副腎静脈血中アルドステロン値のみが1,600ρg/mlと異常高値を示し,本症例では副腎静脈血samplingにより患側を診断しえた.摘出した左副腎腫瘍は,大きさ, 1.9×1.5×1.5cm,重量, 2.5gの腺腫であった.
2症例とも術前の局在診断に成功し,また腫瘍摘出により血中アルドステロンの正常化,高血圧および低K血症の改善が認められ,外科的治療が効を奏した症例であった.

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