日本臨床外科医学会雑誌
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眼窩転移をきたした再発乳癌の1例
大東 弘明高塚 雄一河原 勉山田 光則保倉 賢造
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1982 年 43 巻 2 号 p. 119-124

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抄録

最近,われわれは珍らしい眼窩転移をきたした再発乳癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告した.
本症例は52歳の女性で,左乳癌[T3 N1b M0]で定型的乳房切断術を受けたが,術後1年6カ月で左鎖骨上リンパ節転移および局所皮膚再発をきたした.ホルモン療法と放射線療法により一時再発転移巣の縮小を見たが,再発5カ月後に,右眼球結膜浮腫,眼痛が出現,しだいに眼球突出も著明となりC T-scanによって右眼窩腫瘍と診断された.
また,この頃より肝,肺,骨転移などの広範な全身転移をきたし,全身化学療法を行なったが効果なく再発後9カ月で死亡した.
剖検時,右眼窩内脂肪織に腺癌細胞の転移巣を認め,病理組織学的に乳癌の眼窩転移と診断された.
本邦における転移性眼窩腫瘍については, 1967年に高安が41例をまとめて報告しているに過ぎない.今回われわれは,それ以後15年間の自験例を含め病理組織学的に十分検索のなされた12例の報告例について文献的集計を行った.これら12例のうち,原発巣としては乳癌が最も多く4例で,次いで肺癌の3例であった.平均年令は44歳で,男女比は同数であった.初発症状としては,視力障害や眼球突出が多かったが,乳癌よりの転移性眼窩腫瘍は再発例に多く,肺癌はこれとは対照的に,原発巣判明よりも先に眼症状が出現していた.眼窩転移に対しては,放射線治療が有効であるとされており,今日ではC T-scanなどの出現で以前に比べ診断も比較的容易になり,乳癌術後のfollowに際して,眼窩転移の存在を念願に置き,早期に治療すべきである.

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