日本臨床外科医学会雑誌
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甲状腺濾胞癌の血管侵襲について-第VIII因子染色を用いて-
岩崎 博幸呉 吉煥真鍋 嘉尚鈴木 章杉野 公則後藤 久松本 昭彦伊藤 國彦細田 泰弘
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1988 年 49 巻 7 号 p. 1135-1139

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抄録

甲状腺濾胞癌の血管侵襲を詳細に調べるため,原発巣の病理組織標本に, HE染色,ビクトリアブルー・HE重染色,第VIII因子染色を行い,血管の染色性の優劣を比較検討し,血管侵襲と臨床所見についても検討した.対象は横浜市立大学第1外科および伊藤病院で過去10年間に手術を行った甲状腺濾胞癌48例である.血管侵襲像の判定は腫瘍細胞巣が血管内腔に認められ,かつ血管の内皮が全周にわたり保たれているものとした.結果は,第VIII因子染色を行うと, 48例中31例(64.6%)に血管侵襲像を認めたが,ビクトリアブルー・HE重染色では20.8%, HE染色では8.3%といずれも第VIII因子染色には及ばなかった.
また血管侵襲と腫瘍径との関係を検討したところ, t1, t2症例では,血管侵襲陽性例が50%弱なのに対し, t3, t4症例では80%を越え, 5%以下の危険率で統計学的に有意差を認めた.さらに血管侵襲陽性例の平均年齢は陰性例に比べ有意に高かった.

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