日本臨床外科医学会雑誌
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甲状腺悪性リンパ腫の予後因子の検討
小林 薫森 透八代 亨鈴木 章真鍋 嘉尚尾崎 修武伊藤 國彦三村 孝玉井 誠一東 与光
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1989 年 50 巻 3 号 p. 454-463

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抄録
甲状腺悪性リンパ腫58症例について,予後とその予後因子を検討した.症例は1975年より1987年までの13年間に,伊藤病院で経験した甲状腺のnon-Hodgkinリンパ腫58症例で,年齢は36歳より81歳(平均64.2±9.2歳),男性12例,女性46例であった.治療としては基本的に60Coの放射線治療を行っている.症例全体の累積生存率は61.2%(5年,10年とも)であった.病期で分類すると,stage Iの症例の累積生存率は85.7%(5年,10年とも),stage IIのそれは80.0%(4年),stage IVのそれは16.9%(5年,7年とも)であった.組織型をLSG分類により分類すると,濾胞性リンパ腫の症例の累積生存率は100%(5年,10年とも),びまん性リンパ腫のそれは50.3%(5年,10年とも)であった.組織型を国際分類により分類すると,low grade症例の累積生存率は100%(5年,10年とも),intermediate grade症例のそれは53.8%(5年,10年とも),high grade症例のそれは35.3%(5年,10年とも)であった.年齢別で分類すると,59歳以下の症例の累積生存率は84.8%(5年,10年とも),60歳以上のそれは55.5%(5年,10年とも)であった.男女別の累積生存率には有意差を認めなかった.甲状腺悪性リンパ腫の予後は,腫瘍を形成する組織型に強く依存する傾向がみられた.
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© 日本臨床外科学会
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