日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
シートベルト着用による鈍的腸管・腸間膜損傷の治療経験
シートベルト外傷の6例
佐藤 裕佐藤 清治広橋 喜美伊山 明宏原岡 誠司溝口 哲郎片野 光男樋高 克彦原田 貞美藤原 博山本 裕士久次 武晴
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 50 巻 3 号 p. 577-584

詳細
抄録

1985年5月から1987年12月までの3年7ヵ月の間に,6名のシートベルトに起因する鈍的腸管・腸間膜損傷を経験したので報告する.
症例は男性5名,女性1名の計6名で,平均年齢は51.7歳であった.このうち,盲腸破裂と多発小腸穿孔をきたし,すでにshock状態におちいっていたために,回盲部切除を余儀なくされた女性を術後敗血症で失なった以外は全例軽快退院した.また大腸に損傷のあった5例中,遊離穿孔に至っていたのは2例のみで,あとの3例は腸間膜損傷をともなった腸管壁の漿膜筋層断裂にとどまっており,腸管切除をせずに吸収糸にて縫縮,修復するのみで良好な結果を得た.
診断面においては,腹部CT検査が腹腔内遊離ガスと液体貯留をあわせて同定でき,しかもその性状にも言及できる利点があり非常に有用であった.
交通事故の増加とシートベルト着用の義務化にともない,今後シートベルトによる鈍的な腸管・腸間膜損傷が増加するものと考えられる.シートベルトを着用した交通外傷患者の診療に際しては,常にこのことを念頭おくべきことを強調したい.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top