抄録
乳腺扁平上皮癌2例の臨床像と病理学的所見に,本邦報告例56例の文献的考察を加えて報告する.症例は,57歳女性(症例1)と61歳女性(症例2)で,病理組織学的には,症例1では硬癌と扁平上皮癌(SCC),症例2では乳頭腺管癌とSCCの混在を認めた.腋窩リンパ節転移を両者に認め,その組織像は症例1ではSCC,症例2では乳頭腺管癌であった.エストロゲンレセプターとプロゲステロンレセプターは,症例1で両者とも陰性,症例2で両者とも陽性であった.報告例の検討では平均年齢は50.3歳で,本邦では年長者に多くみられる傾向を認めた.導管癌の混在するSCC (adeno-SCC)では,pure SCCに比べてリンパ節転移例が多く,転移リンパ節の組織像は導管癌よりSCCを認める症例が多かった.pure SCCの扁平上皮癌細胞と,adeno-SCCを含めたmetaplastic carcinomaにみられる扁平上皮癌細胞とは,生物学的悪性度において違いがあるのではないかと考えられた.