抄録
胸腔内出血の原因としては種々のものが考えられるが,肺絨毛腺腫によるものは稀と思われる.
42歳女性が,妊娠中絶後80日目に,胸痛,呼吸困難,嘔気にて緊急入院した.胸部X線像では,腫瘍陰影は明らかでなく左胸腔内の液体の存在を示していた.胸腔穿刺排液は血性であった.その後,液体の増加および貧血の増悪を認めたため,止血目的にて開胸術を施行した.区域8に示指頭大にて先端がカリフラワー状を呈する腫瘍よりの出血を認め,肺部分切除を行った.組織学的には肺絨毛腺腫であった.中絶時の絨毛の転送によるものと思われ,胸腔内出血の原因としては稀なものと考え報告した.