抄録
ITP合併胃潰瘍患者に発見された胃癌症例に完全分子免疫グロブリンの大量療法(400mg/kg/day)を術前5日間行い.血小板10単位輸血と併せ,血小板数が7.3×104/mm3から18.8×104/mm3まで上昇した時点で,手術施行した.胃全摘,R2リンパ節廓清,摘脾を行い,Roux-Y法にて再建した.術中出血量は400ccで,術中輸血は行われなかった.
術後,血小板を計20単位輸血した結果,血小板数は約80×104/mm3程度に維持され,術後合併症を惹起する事なく順調に経過し,術後21日目に退院,近医での経過観察となった.
完全分子型免疫グロブリン大量療法は,短期間に血小板数を安全かつ確実に増加させるため,他剤が無効で,著明な出血傾向があり,外科的処置または出産等一時止血管理を必要とする場合に,最も良い適応があると考えられる.