1997 年 58 巻 12 号 p. 2751-2755
上部消化器手術334例を対象とし,創感染発生の危険因子としての術前後の創処置,手術臓器,手術時間,閉創時創汚染の有無,付着菌種の関与を検討した.創感染の発生率は全体で12.3%で,術前ブラッシング,術後創洗浄を加えることにより13.9% (29/209)から9.6% (12/125)へ改善する傾向が見られた.胃・肝・胆道・膵の臓器間に創感染の発生率の差は無かったが, 5時間以上の手術症例(20.9%)は3時間以下の症例(42%)に比し有意に高率で,危険群として対応する必要があると考えられた.閉創時の創洗浄液を培養した125例中92例(74%)に細菌を検出した.非腸内細菌群が検出された82例中3例(3.7%),腸内細菌群が検出された10例中7例(70%)が実際に創感染を起こし,腸内細菌検出群を危険群とみなすことが出来た.逆に,創感染を起こした12例のうち9例において閉創時付着菌が創感染起炎菌と一致し,創洗浄液培養からの腸内細菌群検出を創感染発生予測マーカーとして利用できる可能性が示唆された.