日本臨床外科医学会雑誌
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食道再建胃における術後照射の影響に関する病理組織学的検討
岩田 尚士国安 弘基平井 敏弘山下 芳典吉本 晃宏桑原 正樹峠 哲哉
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1997 年 58 巻 12 号 p. 2784-2790

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抄録

食道再建胃(上半むきみ全胃,後縦隔経路)粘膜における術後照射の影響について,病理組織学的検討を加えた.食道癌切除症例のうち術後照射(+)26例, (-)16例を対象とした.術前より最長2年間,経時的に内視鏡下に(再建)胃より生検を行い,病理組織学的に炎症(好中球浸潤,糜爛,浮腫,壊死),腸上皮化生,異型性などの所見を数量化し,その変化について検討した.炎症所見は照射,非照射群ともに上,中,下部の順に強く,血行の影響の関与が考えられたが,両群間の比較では,いずれの部位でも照射群でより強い炎症所見が認められた.また異型性は照射群の上,中部にのみ認められた.同一症例で経時的変化を検討すると,術後に上部ほど強い炎症所見を認め,照射によりさらに炎症は増強し異型性も出現するが,時間の経過とともに炎症所見,異型性ともに消退傾向を示した.以上の結果から術後照射の再建胃に及ぼす影響は許容範囲内と考えられた.

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