1997 年 58 巻 12 号 p. 2815-2818
ガス壊疽は,ガスの産生を伴う,皮下結合組織および筋肉の感染症の総称である.多くは四肢に発症するが今回われわれは頸部に発症した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例: 59歳男性,主訴:咽頭痛,合併症:糖尿病,慢性膵炎,現病歴:平成8年4月に口腔内を損傷したが放置, 5月に入り咽頭痛が出現したため来院した.直ちに入院して抗生剤にて治療を開始したところ, 4日目に口腔内に悪臭を伴う膿の排出があった.頸部X線写真, CTにてガス像が認められたためガス壊疽と診断し緊急手術を行った.手術は広範なデブリートメントとドレナージを行い,術後はポビドンヨードとオキシドールによる洗浄を行った.術後経過は順調であった.