1997 年 58 巻 12 号 p. 2836-2840
症例は44歳男性で,左側胸部の腫瘤を主訴に来院した.腫瘤は側胸部の第VIII肋骨を主に肩甲部に至っていた.術中迅速診断にて悪性像は認められず,腫瘤の完全切除が施行された.永久標本にて細胞異型のない紡錘状細胞が膠原線維を伴って増殖しており,筋肉や肩甲骨にも浸潤していた.最終診断はextra-abdominal desmoid腫瘍と診断された.術後6カ月後の現在まで再発は認めていない.胸壁原発のextra-aabdominal desmoid tumorは稀で,本邦報告例は17例にすぎない.治療においては局所再発が多いことより十分な切除が必要である.