1997 年 58 巻 12 号 p. 2841-2850
過去4年間に特発性食道破裂6例を経験した.性別は全例男性,年齢分布は35歳から50歳で平均44.0歳であった.全例,飲酒に起因する嘔吐が発症誘因であった.初発症状は上腹部痛が4例に,急性腹症様の腹部症状が3例に,背部痛が2例に見られた.胸部X線像で縦隔気腫が5例に,水気胸が3例に,皮下気腫が2例に,胸水貯留が2例に見られた.食道造影で造影剤の食道外への漏出が確認されたのは6例中4例に過ぎず,他の2例では胸腔穿刺が診断根拠となった.発症から診断確定までに平均33時間を要していた.食道壁損傷の強い3例に破裂創縫合閉鎖時,食道内腔にTチューブを留置し食道外瘻を造設したところ, 2例に良好な結果を得た.さらにTチューブ抜去時,瘻孔内にフィブリン糊を充填し瘻孔の早期完全閉鎖を得た.治療成績向上には早期診断が最も重要であり,初診時,本症についての認識をもって対処することが大切である.