1997 年 58 巻 12 号 p. 2865-2869
症例は30歳女性.吐血にて近医に緊急入院した.その後当院転院となり上部消化管内視鏡検査にて胃体上部前壁に巨大潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.潰瘍以外の隆起面は正常粘膜で覆われ,粘膜下腫瘍が疑われた.同時に施行された生検で平滑筋腫の診断であった.また胃体下部前壁にも有茎性の粘膜下腫瘍を認めた.生検では悪性所見を証明できなかったが肉眼的,画像診断的に平滑筋肉腫と診断し,胃全摘術+2群リンパ節郭清を施行した.術中所見では肝転移,腹膜播種,浸潤は認めなかったが腫大したリンパ節を数個認めた.病理組織学的検索では2個の粘膜下腫瘍はどちらも独立した平滑筋肉腫で同時多発性病変と考えられ,リンパ節転移も認めた.これまで多発性胃平滑筋肉腫の報告は少なく検索した範囲では自験例を含め10例のみであった.