日本臨床外科医学会雑誌
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腹膜中皮腫の播種性転移により小腸穿孔をきたした1例
頼木 領青松 幸雄金廣 裕道畑 倫明中野 博重
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1997 年 58 巻 12 号 p. 2891-2895

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抄録

症例は64歳男性.主訴は右下腹部痛.石綿肺にて当院内科で加療されていたが,右下腹部痛出現し当科に紹介された.腹部に強い反跳痛を,胸部X線写真にてfree airを認めたため,消化管穿孔による腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.開腹時,右横隔膜を主病巣とする径5cm大の腫瘍を,また腹腔内に最大径2cm大の多数の播種性転移巣を認めた.回腸末端より口側20cmの部位の転移巣に穿孔を認め,この部位を含む回腸部分切除術および端々吻合術を施行した.病理組織検査にて,中心が壊死に陥り穿孔を起こした腹膜中皮腫の播種性転移を認めた.コロイド鉄を用いた免疫組織化学染色にて中皮腫との確診を得た.腹膜中皮腫は比較的稀な疾患であり,播種性転移による小腸穿孔という興味深い症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

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