1997 年 58 巻 12 号 p. 2901-2903
小腸腫瘍は比較的稀な疾患であり,術前診断に難渋することが多い.今回,われわれは下血で発症し,術後の病理学的検索で平滑筋芽細胞腫と診断された症例を経験したので報告する.症例は57歳男性.下血とフラつきを主訴に外来受診.検査の結果高度の貧血を認めた.入院後,腹部エコー, CT,注腸透視, GF, CFなどを施行したが有意な所見は得られなかった.小腸からの出血の可能性が高いと考え,本人,家族と相談のうえ手術を施行.回盲部より約1m口側の回腸に腫瘍を認め,切除術を行った.術後の病理学的検索にて腫瘍は平滑筋芽細胞腫で,これによる出血であったことが判明した.上部,下部消化管精査で有意な所見が得られなくても,下血,貧血などの症状が持続する場合,小腸腫瘍も念頭に置く必要がある.