日本臨床外科医学会雑誌
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閉塞性大腸炎穿孔の1例
井上 慎吾草間 俊行茂垣 雅俊名取 宏松川 哲之助
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キーワード: 閉塞性大腸炎, 穿孔, 直腸癌
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1997 年 58 巻 12 号 p. 2931-2934

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抄録

近年閉塞性大腸炎の認識が高まっているが,本疾患による穿孔例は稀であるため報告する.症例は67歳,男性で,急激な下腹部痛で来院した.下腹部に筋性防御,圧痛,反跳痛を認め,低血圧を示した.腹部単純X線所見では,遊離ガス像や小腸ガス像を認めなかったが,腹膜炎によるショック状態が疑われ,緊急手術を施行した.開腹時所見では,大腸内容物によって汚染された腹水を認め,直腸前壁部の穿孔とそれより肛門側に直腸癌(Ra)を認め,閉塞性大腸炎による穿孔性の汎発性腹膜炎と考えられた.全身状態が不良のため,ハルトマンの手術を施行した.切除標本では,直腸癌と穿孔部は約3cmの正常粘膜を有し,病理組織学的に穿孔部は虚血性腸炎の所見を呈していた.術後に偽膜性腸炎を発生した.また腹壁創離開により再手術を施行したが,術後50日目に軽快退院した.

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