1997 年 58 巻 9 号 p. 2084-2088
大腸粘膜下腫瘍の中では比較的稀なリンパ管腫2例を経験した.
症例1は, 54歳,女性.大腸癌検診の結果,便潜血反応陽性の指摘を受け,近医で実施した注腸造影検査で横行結腸肝彎曲部付近に隆起性病変を認められ,精査目的に当科に入院した.大腸内視鏡では同部に表面平滑で光沢,透明感があり,鉗子の圧迫によって容易に変形する半球状の粘膜下腫瘍様隆起性病変が認められた.リンパ管腫を疑い横行結腸部分切除術を施行した.病理組織学的にリンパ管腫と診断した.
症例2は, 78歳,男性.横行結腸癌に対し,結腸部分切除術後約5カ月時の大腸内視鏡にてS状結腸に症例1と同様の隆起性病変を4カ所に認めた.穿刺吸引により縮小し,リンパ管腫を強く疑った.現在経過観察中である.
本邦報告例についての文献的考察を加え報告する.