1998 年 59 巻 2 号 p. 468-472
肝蛭症の1切除例を経験したので報告した.症例は71歳の男性で,心窩部痛のため腹部超音波およびCT検査を施行し肝内異常陰影を指摘された.血液生化学的に好酸球増多,胆道系酵素の軽度上昇,高CEA血症を伴い,画像診断にて肝左葉に限局した多発性結節性腫瘤を認めた.肝内胆管癌が否定できず,肝左葉切除を施行した.切除標本では境界明瞭,黄白色の多結節癒合型腫瘤を認め,組織学的には好酸球浸潤の著明な膿瘍であった.寄生虫感染が疑われたが,切除標本および糞便内に虫体,虫卵は証明できず,術後血清免疫学的検査(Ouchterlony法および免疫電気泳動法)にて肝蛭症と診断された.手術および術後のPraziquantel内服により血液生化学的検査所見は改善された.