1998 年 59 巻 2 号 p. 473-476
十二指腸平滑筋肉腫の壊死と感染による多発肝膿瘍の1例を経験したので報告する.
患者は55歳,男性.持続する原因不明の発熱を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に潰瘍をともなう隆起性病変が認められ,腹部超音波検査では肝の両葉に多発性の低エコー病変が認められた.腹部CT検査で十二指腸下行脚の4×5cm大の造影強陽性の腫瘤と肝両葉の多発性の低吸収域像が認められ,十二指腸原発の悪性腫瘍と多発性肝膿瘍の診断にて開腹した.膵頭十二指腸切除術を施行し,病理診断は中心壊死をともなう十二指腸原発の平滑筋肉腫であった.
この平滑筋肉腫は腫瘍の中心壊死をともない,消化管内腔と交通して局所で感染巣が形成され,感染が経門脈性に肝に拡がることにより肝膿瘍が形成されたと考えられた.