59 巻 (1998) 8 号 p. 2058-2062
発症後早期に腸閉塞をきたした狭窄型虚血性大腸炎の1例を経験したので報告する.症例は56歳,女性.下血と下腹部痛を主訴に入院,画像診断で下行結腸下部に長さ6cmの高度な狭窄が認められた.注腸透視後イレウス症状が増強したため経肛門的に減圧を試みたが改善なく,発症後4日目に結腸切除術を施行した.切除標本では粘膜側の壊死は全周におよび,組織学的に粘膜と粘膜下層に高度な出血壊死がみられ,この虚血性変化が一部腸管の全層に波及した狭窄型虚血性大腸炎と診断された.術後経過は良好である.通常,狭窄型虚血性大腸炎は潰瘍の瘢痕収縮が徐々に進行し,腸閉塞が発現する発症後1~3カ月目に手術が行われることが多い.本症例は全周性の虚血性変化が一部腸管の全層に波及したため,狭窄症状が急激に進行し早期の手術が必要であった.従って,結腸狭窄の診断に際し,稀ではあるが発症早期に腸閉塞をきたす虚血性大腸炎の存在を念頭に置く必要がある.