1999 年 60 巻 12 号 p. 3185-3188
症例は75歳,女性.当院にて胆石症の術前精査中に,上部消化管内視鏡で十二指腸乳頭部のやや口側に,陥凹性病変を認めた.生検で高分化腺癌の診断であった.幽門温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病変は13×5mm大のIIc型の早期癌で,深達度はmであった.十二指腸癌を見逃さないためには,上部消化管内視鏡検査を行う際に,下行脚までの観察を行うことが重要である.十二指腸腫瘤に関しては,形態的に可能であれば内視鏡的切除による完全生検を行うことが,治療方針の決定の上で最良と考える.陥凹型十二指腸癌は極めて稀な疾患であり,自験例を含め本邦では23例の報告があるのみである.これらの報告例を含め,若干の文献的考察を加えて報告した.