日本臨床外科学会雑誌
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Basedow病に合併した甲状腺乳頭癌の生物学的特異性に関する研究
峯岸 晶子小林 慎加固 紀夫畑中 亮高谷 俊一鈴木 宗平
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キーワード: 甲状腺癌, Basedow病
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2000 年 61 巻 12 号 p. 3156-3163

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抄録

Basedow病に合併した甲状腺乳頭癌の生物学的特異性を明らかにする目的で過去15年間に当科で手術を施行したBasedow病非合併甲状腺乳頭癌(PCa) 210例とBasedow病合併甲状腺乳頭癌(BCa) 11例を比較検討した.術後の予後因子としてpT, N, Ex因子,また免疫組織学的にPCNA陽性率とc-Fos, c-Mycの発現率を各々比較検討した.その結果, BCaではPCaと比較して腫瘍径は小さいものの腺内に多発する傾向があり,高度なリンパ節転移をきたす例もある一方で,腺内多発,リンパ節転移陽性症例においても術後転移再発例はなく,予後は良好であった.免疫組織染色の結果, Basedow病組織ではPCNA平均陽性率, c-Fos, c-Myc発現率ともに高く, BCaの癌組織ではより高率に発現していた.以上のことより, BCaにおける腺内多発傾向はBasedow病における甲状腺組織の細胞増殖能充進状態が一因になっている可能性が示唆された.

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