日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
年齢,治療法別の遠隔成績からみた胃粘膜内癌の治療戦略
吉川 時弘加藤 英雄新国 恵也塚原 明弘坂田 純
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 61 巻 3 号 p. 623-627

詳細
抄録

胃粘膜内癌(m癌)の手術例311例と内視鏡的粘膜切除例(EMR)227例の治療成績を年齢,治療法別に比較検討し,以下の結果を得た.
1. 手術例の5生率は70歳未満では95.1%であり, 70歳未満のEMR例の88.2%に比し有意に良好であった.一方, 70歳以上では手術例とEMR例の生存率に差はなかった. 2. 術式別の5生率は幽門側切除が92.7%,全摘80.2%, であった.年齢別には, 75歳以上で幽門側切除77.2%,全摘16.7%であり, 75歳以上の全摘例の予後が不良であった. 3. m癌手術例のリンパ節転移率は2.3%, 術前の予想深達度をsm以上としたのは21.5%であった. 4. 死亡例の死因は手術例, EMR例に差はなかった. 5. 75歳以上の高齢者に対してはEMRが可能であればEMRを行い,その組織診断から術式の検討を行うなどの,治療戦略が必要である.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top