2000 年 61 巻 3 号 p. 628-631
転移性小腸癌は極めて稀な疾患である.最近穿孔にて発症した上顎癌の回腸転移を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は63歳,男性. 1997年12月他院にて左上顎癌の手術既往あり. 1999年3月嘔気,嘔吐,腹痛を主訴に来院.腹膜刺激症状著明であり腹部CT検査にてfree airを認め緊急手術施行した.手術所見にて腹腔内に多量の膿性腹水の貯留を認め,回腸末端部より20cm部位に輪状狭窄があり,その狭窄部内に穿孔部を認め,回盲部切除を施行した.病理組織検査にて低分化型扁平上皮癌と診断され,以前に手術された上顎癌の病理組織像と比較したところ一致した.術後経過順調にて退院したが,胸部CTにて肺転移を認めた.上顎癌の転移経路については血行性に胸部縦隔を通過し,小腸転移する経路が推察されるが,本症例においても異時性ではあるが肺転移をきたしていたことより血行性の可能性が強く示唆された.