2000 年 61 巻 3 号 p. 689-692
症例は59歳,男性.下血,めまいを主訴に来院した.小腸造影X線検査にて回腸に直径約2cmの隆起性病変を認めたため回腸腫瘍の診断にて回腸切除術を施行した.腫瘍は1.8×1.8×1.5cm大で,回盲部より約60cm口側に認められた.術中,明らかな腹膜播種,肝転移,リンパ節転移は認められなかつた.病理組織学的所見より平滑筋芽細胞腫と診断された.その後,肝転移,腹膜転移が出現しいずれも切除を施行したが,初回手術より4年2カ月後,全身転移を来して死亡した.小腸の平滑筋芽細胞腫は比較的稀で,その良・悪性の判断は困難とされているが,本例のように予後不良な経過をたどるものも存在するため,慎重な経過観察が必要である.