胃カルチノイドの4例を経験した.症例1は61歳の男性で体上部に3病変を認めた多発例で,術前生検でカルチノイドと診断され胃全摘除術施行,症例2は68歳の女性で噴門直下に2型のカルチノイドと体上部の早期癌2病変と重複し,術前生検ではporでカルチノイドの診断はついていなかった.手術は脾摘除術を伴った胃全摘除術を施行した.症例3は55歳女性で体上部に粘膜下腫瘍様の所見を呈し術前生検でカルチノイドと診断され胃全摘除術施行した.症例4は66歳の男性で30年前に胃ポリープにて幽門側胃切除された残胃にみられた例で,術前生検でtub 2とカルチノイドの術前診断はつかず,肝および横行結腸に直接浸潤しリンパ節転移も高度で浸潤部を切除し残胃全摘および膵尾部・脾合併切除した. 4例ともカルチノイド症候群はみられず術前診断がついていたのは2例のみで,術式は4例とも胃全摘除術を施行した.全例A型胃炎の所見はみられないが,病態はそれぞれ多彩であり発生の多様性が伺われた.