日本臨床外科学会雑誌
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腎移植患者に合併した横行結腸穿孔の1救命例
繁田 直史福田 康彦有田 道典岡本 有三香川 直樹田中 恒夫
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2001 年 62 巻 3 号 p. 726-730

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抄録

ショック状態に至った大腸穿孔例は予後不良であるが,今回われわれは腎移植患者において1救命例を経験した.患者は52歳女性で, 1993年3月に生体腎移植を受けている. 1999年11月2日に急激な腹痛を生じ,約10時間後に当院を受診,血圧52/13mmHgで,腹部緊満著明であった.胸部単純X線で腹腔内遊離ガス像を認めたため,緊急開腹手術を行った.横行結腸脾彎曲部付近の腸間膜付着部反対側に直径約3cm大の穿孔を認め,同部および肛門側には,腫瘍を認めなかった.病変部横行結腸を局所切除・吻合し,口側横行結腸にストーマを設置した.術後にエンドトキシン吸着を2度行った.
術後graft lossに陥ることもなく,第131病日に退院した.病理組織学的所見上穿孔以外には明らかな所見はえられなかった.致死率の高い病態を腎移植患者に合併しながら救命し,さらにはグラフト機能を温存しえた症例であった.

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